今作は六面体によって構成される建築の提案となっている。敷地いっぱいにグリッドフレームを配置し、そのフレームに6つの面を張り合わせて空間が形成されていく。
6つの面が構造から解き放たれることで、要求される性能や機能にデリケートに応えることが可能となった。一律に外壁や内壁、屋根や床といったカテゴリーに分けるのではなく、ゾーンによって要求される境界の性能を丁寧に紐解くことで、建築用語は再定義されることになった。薄い壁や透明の壁、分厚い壁、歩けない床や透明の床などが無理なく生まれていく。境界を平面的に断面的に様々なパラメーターで再検討し、プロットされている。その空間を住人が森で木陰を見つけるように、快適な場所を見つけて移動する。そういった居場所の設定を一時的に行っている。
また構造から解き放たれたシステムによって、空間がフレーム内で移動可能となった。空間が移動することで、環境の変化にも迅速に対応することも可能となった。ここでいう環境とは、天候や季節、家族構成やライフスタイル、お隣の建て替えなどによる外部環境の変化、プログラムの変化など様々な時間軸による環境の変化である。それらの環境の変化に合わせてアメーバのように形態を変化させることが可能な建築となっている。
このフレームを一つのガイドとして生活が溢れ出す住宅を期待しながら設計が進められた。